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寺部の家
「透ける民家」を目指して
計画地は海と山に囲まれた農村集落。近くの川に恵まれ、水田、養鰻池、畑が盛んに営まれてきた地域である。付近で採掘される「幡豆石」は良質な花崗岩で、港が近い為、海運を利用し、中部地方の港湾・河川整備に利用されてきた。建主は農作業ができる田舎暮らしを求めて、この地に移住を決意した。
敷地は南、西、北側3面接道する角地で、東側は畑として利用する借地。また南、西側には槙の生垣が防風林としてあり、道路からは1m程上がった土地形状であった。
「人生フルーツ」の津端ご夫妻のように、実のなる樹木に囲まれながら、自給率を上げ、家で過ごす時間を楽しむ民家を望まれた。風を感じながらの外ご飯。薪ストーブで調理しながらの読書。近所の子どもが集まり、犬猫と暮らす、まさに農村風景である。
これら諸条件から「切妻屋根の民家」が風土に馴染む形態であろうと率直に感じた。そして高低差のある土地を活かし、半地下空間を計画する事で平屋のような佇まいを作れないか検討を重ねた。構造は「真壁工法」。地元大工の手刻みによる力強い架構と、地産の幡豆石で、普遍的な農村民家を生み出せるのではないかと考えた。
プランは南北に長い矩形で中央の半分以上を「土間空間」とした。昔の農家のように土間を中心とした民家が、建主の暮らし方に合うと感じた為である。土間の南北には2層の空間を構成し、水廻りや個室を配置。半階ずらすことでプライバシーの確保をしながら、壁で仕切らず緩やかに繋げることを心掛けた。家族構成の変化や将来の用途変更(野外保育、ワークショップ、民泊)などに対応できるよう、可変性のある一室空間とし、敷地全体の自然を取り込む「透ける民家」を目指した。
切妻屋根は梁間方向にかけ、東西に深い軒下空間を作った。西側を生垣に囲まれたアプローチとし、東側を畑に面した半屋外空間とすることで、深い軒で自然を包み込むように屋内と一体化させた。南北に長い矩形ではあるが、冬であっても妻面から太陽光が深く注ぎ込む為に暖かく、夏は深い軒で日差しを遮る為に涼しい温熱環境が実現し、また半地下の安定した地中熱の作用も効果的であった。
今後、地域の交流の場として、更に可能性が広がる民家に成長するであろう。建主の暮らし方に期待したい。
所 在 地/愛知県西尾市
主要用途/専用住宅
家族構成/夫婦+子供+祖母
設計−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
意匠/西口賢 建築設計事務所 岩間建築設計事務所
担当/西口賢 岩間昭憲
構造/(有)ワークショップ 担当/安江一平
造園/(株)西村工芸 担当/西村直樹
施工−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
一色建築 担当/岡田祐平
大工 遠山建築 担当/遠山雅之
星野工務店 担当/星野竜治
設備 鈴木アクアライフ 担当/鈴木智行 田中直文
電気 瀬筒電気工事 担当/瀬筒直治 瀬筒照利 川本明徳
コンクリート躯体 髙尾土建 担当/髙尾真宏
左官 尾崎左官 担当/尾崎正次郎
屋根 芳賀板金 担当/芳賀敏文
木製建具 黒部建具店 担当/黒部達也
塗装 施主
造園 (株)西村工芸 担当/西村直樹
庭利 担当/荒木英志
SATONIWA 担当/佐藤貴裕
水谷庭店 担当/水谷智樹
構造・構法−−−−−−−−−−−−−−−−−
主体構造・構法 木造在来工法 ベタ基礎
規模−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
階数 地上1階(一部 地下1階)
軒高 2,778mm 最高の高さ 5,258mm
敷地面積 341.24m2
建築面積 109.98m2(建蔽率32.23% 許容70.00%)
延床面積 118.37m2(容積率26.00% 許容100.00%)
1階 88.71m2
地階 29.66m2
工程−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
設計期間 2017年7月〜2018年4月
工事期間 2018年5月〜2019年7月
敷地条件−−−−−−−−−−−−−−−−−−
地域地区 第1種低層住居専用地域 法22条区域
道路幅員 北6.0m 西20.0m 南4.0m
駐車台数 3台
外部仕上げ−−−−−−−−−−−−−−−−−
屋 根/ガルバリウム鋼板 立てハゼ葺き
外 壁/杉羽目板張り
開口部/製作木製建具
外 構/幡豆石敷き
内部仕上げ・使用機器−−−−−−−−−−−−−−−−−
床 /コンクリート金鏝 防塵撥水剤塗、杉 黒木フローリング
壁 /杉羽目板張り、ほたて漆喰ライト塗
天井/米松梁表し 高圧木毛セメント板張り
設備システム−−−−−−−−−−−−−−−−
空 調 暖房方式/薪ストーブ
冷房方式/ルームエアコン
換気方式/第三種換気
給排水 給水方式/公共上水直結方式
排水方式/公共下水道放流方式
給 湯 給湯方式/ガス給湯器
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